昇降口、雨のち青空

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私は昇降口の掃除当番だった。上履きのまま外に出ると、頭上にはどこまでも青い空が広がっていた。

「雨、やんだねぇ」
「うん」

私の独り言に返事をしたのは、栞ちゃんだった。

「運動場ぐちゃぐちゃだ」

雨の日は仕方がない。今日の昼休みは図書室で本を返そう。そうしたら続きを借りよう。

「……空、飛んでみたいな」
「飛行機に乗れば?」
「そういうことじゃないんだけどなぁ」

今借りている本は、普通の女の子が魔女になるお話だった。私もあんなふうになりたいと、何度思ったことか。


帰りの会のあと、私は栞ちゃんと帰ろうとしていた。
昇降口のあたりで、ふと彼女が立ち止まった。

「……私、空を見つけたんだ」
「空? そんなの私だって」
「そうじゃなくて、誰でも飛べる空」

そう言うと、彼女は地面を指差した。
そこにあったのは青い空と白い雲、が映る水たまり。

「そういうことじゃないんだけどなぁ」
青春
公開:21/09/10 20:53
更新:21/12/04 15:53

おの

趣味で短編小説を書く大学生です。
思いついたとき、思いついただけ。

https://twitter.com/ono_syy
 

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