月面もちつき

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「月ではうさぎが餅をついているんだよ」

幼い頃、宇宙飛行士だった祖父の言葉を鵜呑みにしてしまって、僕は月に憧れた。
念願かなって今、ロケットから月を見下ろしている。

流石にいないかと諦めかけたそのとき、クレーターとは思えない影が確認できた。

——え? おばあ、さん?

その正体はおばあさんのようだった。足場はかなり悪いはずなのに、優雅に本を読んでいる。
僕が驚いていると、先輩が泳いでやって来た。

「そういえばお前、これが初フライトだったな。あのおばあさん、北ヨーロッパからロケットを飛ばすときにはいつもいるんだよ」

なんと不思議なこともあるものだ。
祖父の言っていたことは、どうやら嘘ではなかったらしい。


次、日本からロケットを飛ばすことになったら、月面でつきたてを食べてみようと思う。

もしかしたら地球と月が繋がるのも、夢ではないかもしれない。
餅製の架け橋も、きっと悪くない。
ファンタジー
公開:21/09/11 20:57
更新:21/12/04 15:48

おの

趣味で短編小説を書く大学生です。
思いついたとき、思いついただけ。

https://twitter.com/ono_syy
 

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