さよなら、ジョン

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ジョンが死んだ。

何の前触れもなく、死んだ。
いや、あったのかもしれないが、目を背けていたのだ。

目の前の土の上。横たわるジョンを、じっと見つめる。
キラキラと輝きを放っていた瞳に光は無く、口からはだらりと血の気の失せた舌が飛び出し、力強く地面を蹴っていた足も、今はぴくりとも動かない。何より。風に吹かれて黄金色に靡いていた、あの自慢のジョンの毛並みが、たった数週間で真っ白に変わってしまった。

「流行り病だ」

そう、ジョンは病気だった。しかも、この地域一帯を突然襲ってきた感染症の。
未だに原因も分かっていない。当然、治療薬などあるはずもなかった。

ジョンの頭に手を置き、最後の「いいこ、いいこ」をして、冷たくなった身体を抱き抱える。軽い。
地域の仕来り通り、川に流す。

「さよなら、ジョン」

川に映った自分の髪も白く変色しつつあった。また、すぐに会える気がした。
その他
公開:21/09/11 16:19

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