庭師

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お隣に庭師が来てチョキチョキと剪定をしている。時にはバシバシと大きな音も響く。
素人目にも枝ぶりが見事にカットされ、アートの様に空中に描かれて行く。庭を一つの造形空間として捉え、或る時は大胆に枝が切り落とされるかと思うや、時には繊細に細かくハサミが入る。

時折足場の折り畳みのアルミ梯子がガシャガシャと音を立て、場所が移動され何処から見ても絶景の姿になっていく。
依頼者の高齢の御主人も、時折庭に出てきては綺麗さっぱりしてきたなと満足げに、有り難い、有り難いと言葉を繰り返す。

その時あらぬ事か、何をするのだ勝手に切るなよ、枝も葉っぱも可愛い俺の子供だ、家族だと怒鳴った。
庭師は驚き手を止め、回りも見るも誰も居ない。でもよく耳を澄ますと、ものを言ってるのは何と庭の木々だ。風もないのに松や蘇鉄が激しく揺れている。

庭師は御免と一言謝り、急いで帰ってしまった。そこには脚立が残っていた。
ファンタジー
公開:21/09/11 15:58

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