十二人の怒れる私

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俺は仕事柄、出張が多い。だからこの転移装置の実現は本当にありがたかった。
理屈は詳しくないが、転送元で対象を分解して情報を読み取り、転送先の元素で再生するらしい。
それも、スーツのヨレから寝癖、汗の一粒、それまで頭で考えていた事まで、本当に全て再生するのだ。

「福岡まで」
スタッフは手元を操作して、良い旅を、と手を振る。俺は光に包まれ、消えていった。

気付くと転移が終わったらしく、見える景色が違った。すると、慌てた様子で女性のスタッフが駆け寄ってくる。
「申し訳ございません、手違いがありまして」
聞くと、違う転送先で再生しまったらしい。しかも、全国の十二箇所で。

文句を言う私を連れ出す警備スタッフの導く先には、何やら物騒な部屋が。どうやら俺の生命ごと、ミスを無かった事にするつもりらしい。

徹底抗議した俺たちは何とか解放され、十二つ子としての暮らしを始めた。
SF
公開:21/09/09 18:00
更新:21/09/09 14:25

お弁当係

2021年7月、投稿開始。
小説を読むのが好きですが、書くのも楽しそうで始めてみました。
読んでいただければ幸いです。
 

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