メッセージ

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日が暮れる前に農作業を終えた。あとは晩酌をして眠るだけ。てのひらに出した泡の石鹸が他界した親父の顔に見えたものだから俺は手洗いの手を止める。泡の親父をそっと皿に移してもう一度てのひらに石鹸を出す。今度は親父の太い首だ。それも皿に移して石鹸を出す。今度は厚い胸板が現れる。右腕から右手左腕から左手おなかに背中に腰にお尻。少しずつ皿に盛った小分けの親父は内臓が揃うと喋りはじめて頭から順に消えてゆく。力士だった俺と親父の会話は相撲のことばかり。昔はよく親父の胸を借りたものだ。親父と別れようやく手を洗えると思ったら次はおふくろの泡がはじまる。
さっきまで俺は芋を掘っていた。芋づるの先に見知らぬこどもが掴まっていて、緑色の目に涙をためて引き上げられるのを待っている。気後れした俺はこどもを土に埋めてしまった。
皿に消え残るふたつの大腸。土中のこどもが泣いている。秋はいつだって不可解で俺を健康診断に誘う。
公開:21/09/08 16:23
更新:21/09/08 16:24

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