悪女は林檎を知らない

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「鏡や鏡、この国で一番美しい者は誰?」

白肌の亡き王妃が、そう鏡に問いかけていたのを思い出した。それなのに、私はとんでもないことをしてしまった。

「白雪姫の肌をこんなにも焼くなんて」

この国で美しさとは、白肌のことであった。
身体のためと思って、白雪姫をよく外へ連れ出していた。つまり私のせいで肌が色を持ち、純白ではなくなった。

もはや反論する気力もなかった。言うほどでもないから、数日もすれば元に戻るでしょう。

夜、私は王城を出た。代わりなどいくらでもいる。
後悔があるとするならば、もう少しだけ白雪姫の母親でいたかった。

時は過ぎ、白雪姫の婚約披露パレードが執り行われるということで、私は街道の人だかりに紛れていた。
王城の方から音楽隊と神輿が近づいてくる。

「お母様!」

私に気がついた白雪姫が、そう叫んだ。
彼女の肌はドレスの白よりも焼けているのに、あの頃に増して美しかった。
その他
公開:21/09/09 20:03
更新:21/12/04 15:50

おの

趣味で短編小説を書く大学生です。
思いついたとき、思いついただけ。

https://twitter.com/ono_syy
 

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