デリカシー

10
5

「ほんと、デリカシーのない男だったのよ」
A子はいきりたって一気にまくしたてた。
「あらそう、いい人だったと思うけど」
少しく残念そうにしている、B美。
「また鼻毛が出てるぞ、A子、ってさ、もうちょっとさりげない言い方ってもんがあるでしょ? パーティー会場でよ?」
B美は苦笑しながらも頷いた。A子は満足げに口元をほころばせた。
「別れて大正解よ」
A子は自分でそう言った。
「あ、そろそろ約束の時間だわ、じゃ、またね!」
走り去っていくA子を見ながら、B美は首を振り、バッグから小説を取り出して読みはじめた。

後日。

「だめだったわ。君とは合わなさそう、デリカシーが……って。あいつのがうつったのね。やだわ、もう」
A子はそう言いながら、頬杖をついた。B美は声を沈めて、
「やっぱり彼が適任者だったのよ。ちゃんと指摘してくれるってのも愛情よね。だってあの日、あなた鼻からウインナーが……」
恋愛
公開:21/09/09 09:00

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容