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流石に一時間も座っていれば、目の前の絵が気になり出してきた。
何の変哲もないと言ってしまえば作者に失礼だけど一面緑色の草原の絵なのだからやっぱり変哲はなかった。
でも気になる。何が気になる?一時間もここにいれば気になるのも無理ないのか?
とにかく私はこの絵が気になった。そして段々、その気になった自分が気になった。
私は何を気にしてる?もしかして心配なのか?当たり前だ。心配に決まってる。でも俺が心配してどうする?後は託すしかない。俺が取り乱しても何の意味もない。それよりは明るく迎える準備をしよう。
そうだ。そうに違いない▪▪▪。
不安と焦りがマーブル色の様に混ざっていた私は救われた。

「手術は成功です」
担当医が娘の手術結果を教えてくれた。
安堵の後、私はあの絵の事を聞いてみた。
「うちの理事長が書いた何の変哲もない絵ですよ」
笑う担当医の顔を見ながら、既に私には変哲な絵だなと思った。
その他
公開:21/09/06 15:43

セイロンティー( 鹿児島 )

初めまして。昔から小説を書くのが好きでした。ショートショートの魅力に取り憑かれ、日々ネタ探しに奔走する毎日です。
小説のコンセプトは【ドアノブの静電気くらいの刺激を貴方に】です。
皆様、どうぞ宜しくお願い致します。

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