エリカの花詞

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エリカは静かに佇んでいた。
彼女を取り囲むように人が居るのだが、皆彼女に背を向けている。
「私はここに居るよ」
その声は届かず、皆忙しく手を動かし続ける。
「ほら。私に気付いて」
皆は動き続け、周りと声を掛け合い彼女の存在を無いものにしようとした。
それでも彼女は声をかけ続けた。
決して皆の前に回り込むような事はせず、その場を動こうとはしなかった。

そんな周りとの調和に1人の男の反応が鈍くなってきた。
やがて男は1人で黙々と手だけを動かすようになった。
そして男の手は完全に止まってしまう。
「私はエリカ。ここに居るよ」
男には彼女の声がハッキリと聞こえていた。
そして静かに男は振り返る。
エリカは微笑む。初めてその場を動き男の元まで歩み寄る。
そしてそっと男に唇を合わせた。
ハラリと男は跡形もなく消えていった。
背を向け忙しく動き続ける人々。

元の場所に戻り再びエリカは皆を見つめる。
ホラー
公開:21/09/06 11:28

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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