不整合な電解槽

何かが整合しない。電力保存センター、地域の電力を充電する巨大な蓄電池。充電配電コントロール部門に勤務する俺はいつものように計器を確認し記録する。が、何かおかしい。負極と正極のモーメントが合わない。正極から負極まで確認することにした。電解槽のトンネルみたいな狭く長い通路を歩いて抜ける。湿った空気。水たまりを踏んで歩く。不整合感は強まる。プラスとマイナスが一致せず電極槽に不協和音が波立つ感じ。側壁に矢印。互いに反対を示す二本の矢印はセンターの感電帯であることを示す。その壁に一人が入れるくらいのくぼみをみつけた。暗いくぼみから風が吹いてくる。小さな明かりが奥に見えた。俺はくぼみの中に入った。まっすぐに歩くと広い通路に出た。壁ミラーが付いている。ミラーに映るのは俺の顔と身体、そこには見慣れた鏡像ではなく左右反転しない俺の顔と身体。ここから先は俺も左右反転するのだと納得した。