ケルベロスの災難

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「あら、この子いいわね」
里親探しの会にやってきた年配の女性が、黒くスラリとした精悍な犬の前で止まった。
「この子は、仲間思いで勇敢な犬種の子ですよ」
「なおさら良いわね」
年配の女性は、スタッフに何やら話しながら、黒い犬に目線を合わせて見つめている。
「うちの近所も物騒になってきて。せっかくならカッコいいワンちゃんを飼って、番犬になってもらおうかしらって」
「それなら、この子はピッタリかも」
「ねぇ。本当は首が三つくらいある、ケルベロスみたいな強そうな子を番犬にしたいんだけど、ホホホ」

ケルベロスは地獄の入り口を守るとされる、三つの首を持つ恐ろしい犬の怪物だ。怪物ケルベロスを番犬にしたいというこの年配の女性に対して、里親探しのスタッフが思ったのは「家は地獄かよ…」だったそうな。

あのワンちゃんは、元気だろうか。。
その他
公開:21/09/08 18:00

お弁当係

2021年7月、投稿開始。
小説を読むのが好きですが、書くのも楽しそうで始めてみました。
読んでいただければ幸いです。
 

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