ゴーストライター

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おれは駆け出し中の新人作家だが、スランプに陥り、なかなか小説を書けなかった。このままだと筆を折ることになりかねない。
そこで、学問の神様が祀られていることで有名な湯島天神へお参りに行くことにした。
ある日、いつものように湯島天神で合格祈願ならぬ推敲祈願をしていると、ゾクゾクと寒気がする。
振り向くと、平安時代の貴族のような格好をした男が立っていた。菅原道真だ! 日本史の教科書で自画像を見たことがあるので間違えない。ただ青白く透けて生気がない。
「草葉の陰からお主を見ておったぞ。文章が書けなくて困っているようじゃな。儂が手伝ってやろう」
すると、道真らしき人物がおれに憑依した。
湯島天神から書斎に戻るとドンドン筆が進み、あっという間に小説を書き上げた。
その途端、おれはもぬけの殻となってしまった。どうも生気を吸い取られたらしい。
この小説で文学賞を受賞したものの二度と筆を執ることはなかった。
ホラー
公開:21/09/05 07:20
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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