名もなき花の話

「うわ～、キレイ。ねぇ、この花、なんて名前なの？」
『さぁ？僕も知らないんだ。気付いたら庭に勝手に自生していて…ネットで調べても出てこないから、もしかしたら新種の花かもしれない。…そうだ！もし良かったら君、この花の名付け親にならないかい？』
「う～ん…やめておくわ。だって本当に新種なら、私と貴方だけの庭に沢山の人が来るじゃない。私は貴方と一緒に花を愛でる時間の方が大切よ。花の命は短いんですもの。貴方は私と愛を育む時間がなくなってもいいの？」
『それは困る！』
「でしょ。この花の事は私達だけの秘密…それに女は秘密があるほうが綺麗になるのよ」
『君の美しさの秘密を僕は知ってしまったわけだが、君は美しいままだね』
「あら？女の変化に気付かない男は嫌われるわよ」
『やれやれ…嫌われないように花も君も、しっかり観察していくとしよう』