名もなき花の話

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パーティ会場で壁を背に一人の女性が佇んでいる。
「宜しければお話でも…」と声をかけると周りから笑われた。
それもその筈。女性は壁を背にしているのではなく、壁に描かれた人物画だった。
恥ずかしさに顔が赤くなる。持っていたグラスの中身を一気に煽ると僕は尚も壁の女性に話しかける。嘲笑はさらに大きくなった。
「お客様、こちらへ…」
見かねたコンシェルジュに呼ばれ、僕は会場を後にする。

「ようこそ。壁の花に話しかける変わり者さん。呼び出しに応じてくれて感謝するわ」
僕を待っていたのは壁の人物画そっくりの女性だった。
「貴方の話が面白くて、つい部屋に招いてしまったわ。ねぇ、もっとお話しましょ」
微笑む女性に頷く僕。「貴方の名前を教えて貰えませんか?」
「あら?壁の花に名前なんてないわよ。でもそうね…私との会話がお気に召したら、貴方の名字を私にも頂けないかしら?」
魅力的な提案に思わず笑ってしまった。
公開:21/09/05 20:57

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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