噴水屋

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 今まで何度もこの通りを歩いていたのに、行き止まりまで来たのは初めてだった。と言っても、急に目の前に壁があったわけではない。目の前が急に丸い広場になって、その先はどこにも道がつながっていなかった。
 引き返そうと思った瞬間、広場の真ん中にあるものに気づいた。片方のイヤホンを外すと、チョロチョロという水音が僅かに聞こえた。少し近づくと、それは公園によくある丸い形をして真ん中から水が出る噴水だった。
「へぇ、こんなとこにこんなものあったんだ」
 物珍しくて、もっと噴水に近づいてみると、向こう側に一人の男性がしゃがみ込んでいた。何をしているのか手元が動いている。そして私の気配を感じたのか、おもむろに立ち上がるとこう言った。
「ようこそ、噴水ショーへ」
 まるで執事のように深々と頭を下げ手を胸の前まで上げると手のひらをくるりと回した。そして身体を起こすと言った。
「お待ちしていましたよ」
 
その他
公開:21/09/05 17:49
更新:21/09/05 17:51

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