その朝、舌がやってきた

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舌がやってきた。ドアを開けると白い布を被っている。「おはようございます」というので入れてやった。
ソファに座ると「脱がせていただきます」と舌が現れた。全身タラコ肌。よく歩いて、喋れるものだ。
「はじめまして」
「用件は?」
「まず舌の紹介です」と舌の現況を説明する。「都内には一万人の舌。全身味覚のグルメです。触覚も優れもの。全身性感帯で舌と舌が愛し合うと濃厚です。絡み合ったら大変です」
「どうなりますか?」「舌はゼツ倫、悶ゼツします」
「弁舌爽やかな冗舌だね」
「本日は、舌をもう一枚いかがかと思いまして」
「二枚舌?」
「お上手。その通り。二枚だとよく喋れて、味覚は二倍。愛し合うのも充実。私もじつは二枚です」そう言って自分を巻き上げた。下にまた舌がある。
「立派な二枚目」
「お上手。値段は格安。すぐに手術担当を寄越します」
「じゃ、頼むよ」
「感謝!」
舌は自らを巻くように転がって帰った。
その他
公開:21/09/04 11:49

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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