”成人”

ん？　ここは？

目が覚めると、足の下に部屋が見下ろせた。僕の部屋だ。なにやらベッドの上で身体が横たわっている。もしかして昨日、勉強に疲れたストレスであの世に来てしまったのか。いや、それとも夢か。なんにせよ、ここは現実じゃない。

しかも背中に妙な不快感を感じる。首を横に捻ると、大きな白翼が広がっていた。まさか本当に、天使にでもなってしまったのか。

「これで君も、立派な”成人”じゃな」

振り返るとダーウィンがいた。あの、ダーウィン・フィンチだ。例の進化論の人。英語で話してるのに、何故か吹き替え付きで聴こえる。

「あ、あの、これは……」

「脱皮したんじゃ」

「え？」

「脱皮して”成人”になったんじゃ。ほら、あそこに抜け殻があるじゃろう。蝶と同じじゃよ。翼が生えて、行ける世界が広がったんじゃ。本当は八十歳くらいで”変態”するんじゃが、努力家の君は、どうも成長が早かったみたいじゃな」