名もなき花の話

体育館裏で小さな花壇を見つけた。
初めてここを訪れた時はまだ何も植えられていなかった。
でも数日後、綺麗な花が咲いているのを見てここが凄く素敵な場所に思えた。
花には名札が架けられてある。綺麗な花だし、きっと贈り物用に育てているのだろう。
この花を貰うのはどんな人かを想像し、白紙の名札の前で楽しんでいた。

翌日、名札に名前が書かれてあった。確認してみると担任の先生だった。
これ、先生に贈られる花だったんだ。貰ったら１本譲ってくれないかと聞いてみようっと。
でも先生は学校に来なかった。
学校に来る途中で車にはねられて死んでしまったらしい…
先生の机の上にはあの綺麗な花が供えられている。
あの花は誰が置いたの？そう聞いても誰も知らないと答える。
私は体育館裏へと足を運んだ。刈り取られた後なのか、そこには何もなかった。
でも、１カ月もするとまた綺麗な花が咲いていた。
名札は怖くて見れなかった…