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自転車屋を経営する私の前に、スマホを持った若者が現れた。ずいぶんとチャライ感じだ。
「いやー、この自転車マジかっこいいっすね。これいくらするんすか? おれ、マウンテンバイク乗るんで、興味あるんすよ」
彼はいかにも自転車乗りだという服装をしている。自慢の自転車をほめられて、悪い気はなしない。
「値札見ればわかるだろう。まあ、小さな自転車屋だからこそ、品揃えにはこだわりをもちたくてな」
「そうっすよね。大手だと売れ筋しかおいてなくて、見ていてつまんないっすよ。これからは、こうしたこだわりのショップの時代だと思うんで。
そうそう、この自転車をSNSに上げていいっすか。別に宣伝料を取ろうなんて気持ちはないから安心してください。ただの趣味なんで」
「もちろん、喜んで」
仲間ができた喜びを胸に、私は首を縦に振った。
この後、どこからともなく窃盗団が現れて、自慢の自転車が盗まれたことはいうまでもない。
ミステリー・推理
公開:21/09/02 18:45

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