明日なき日

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「見放したってことだからね。」
 私にレポートを返却してそう言った。わざわざそれを伝えるところが好かない。正しくてそれを誤魔化したりはしない教授はそういった人なのだ。私は人に好かれるタイプではないことはよくわかっている、しかしこれほど突き放されるのは初めてだ。しかし落ち込んではいない、強い解放感が体を包んでいる、酒を唇が痺れるほど一気に飲んでしまった時のようだ。もうレポートは受理されないだろう、どう足掻いでも仕方がない流された小舟はこのまま流れていく定めなのだ。来月末には大学を去ることになる、その前にやることはなんだろうか。意外にもその時は悪魔が私の影の中で佇んでいたようだ、気がついた頃には研究棟に行き私は教授のネームプレートを盗んでいた。怒りもないまま悪事を働いたことに驚いたものの良い記念になったと心の中では喜んでいた。
公開:21/08/31 01:55

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