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物心がついた頃には、少年はその病室にいた。
14年間外へは出たことがない。人生の全てを彼は病室で過ごしている。入れ替わりの激しいこの病院で10年以上入院しているのは少年くらいなものだ。故にいつしか少年は”長老”と呼ばれた。

あやとりを教えてくれた女の子も
宮沢賢治の古い詩集をくれた初恋のあの娘も
ここに入院しているのは内緒だとサインをくれたあの俳優も
病気に心が折れかけた時励ましてくれたあのお兄ちゃんも
食堂でいつも焼豚を分けてくれるあの子も
退院したらサッカーをするって約束した友達も

担当だった看護士のお姉ちゃんまでいなくなった。

噂通り病院に喰われてしまったのだろうか。

「長老、そんなとこにいると風邪ひくぜ。」
見るからに物騒な経歴の持ち主であろう新入りの彼もきっといつか…。

車椅子が進むその先、切れかけの非常灯の下、
病院への入り口はさながら大口を開く悪魔に似ていた。
ミステリー・推理
公開:21/08/30 23:24
更新:21/08/30 23:26
人喰い病院④ 更新が遅くてすみません

空津 歩( 東京在住 )

空津 歩です。

新シリーズ「人喰い病院」はじまりました。

荷物
破顔
秘密
長老
抗争
皇帝
報道

マイペースに描いていきたいです!

SSG1周年!

Twitterアカウント(告知&問い合わせ)
https://twitter.com/Karatsu_a

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