妻市

村では年に一度お寺の境内に妻市が立ち、妻を売り買いする。立ち並ぶテントには数人の女が立ったり座ったり。テントを覗いてぞろぞろ歩くのは男ばかりである。気に入った「妻」に足を止めると、テントのエージェントが声をかけてくる。「お気に入りですか？」男が料金を払うと妻のデータを見せてもらえる。出生地、結婚歴、病歴、特技などと契約金額を見ながら男はその妻を観察する。そしてエージェントがテント裏の面談ブースに連れてゆく。妻との面談は十分以内。面談が終わると男は腹を決める。契約金は平均的な男の年収くらい。契約する場合は手付金をエージェントに払って結婚届けにサインする。
村の男はみんな妻市で妻を選ぶ。財力のある男は毎年のように妻を取り替える。離縁された妻はまた翌年テントに立つ。気丈な妻もあり、結婚して家業を切り盛りする。亭主が怠けると妻は夫を離縁する。離縁された夫は、妻市の翌月の夫市のテントに姿を見せる。