マンゴーマンゴーマンゴー
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僕が新しくこの町に越してきた日。商店街を歩いていると、その男は楽しげな音楽と共に現れた。肩にラジカセを背負って小躍りしながらやって来た男。「マンゴー!マンゴー!マンゴー!」と、叫んでいる。町行く人は皆が笑顔だ。男は手にマンゴーを模したマイクを持っている。男が突然、商店街を歩いている主婦らしき女性に「マンゴー?」とマイクを向けた。向けられた女性も笑顔で「マンゴー!!」と答えている。意味がわからなかった。男はまた、別の人間にマイクを向けた。今度はサラリーマン風の若い男。彼も迷わずマイクに向かって「マンゴー!!」と叫んだ。次々に皆、叫んでいる。なにが起きているのか?僕はこの町で、ちゃんと暮らしていけるのかモーレツに不安になった。しかし、そんな心配は、すぐに消えた。一週間もしないうちに、僕はマンゴーマイクに満面の笑みで「マンゴー!!」と叫んでいた。
ファンタジー
公開:21/08/31 17:32
時折、頭をかすめる妄想のカケラを集めて、少しずつ短いお話を書いています。コメントは励みになります。
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