ただそこで笑っていて

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余命三ヶ月。それは、妹に残された僅かな時間だった。妹には、余命三ヶ月である事は伝えていない。俺は毎日、泣きそうになるのを我慢しながら妹の病室に通った。

「花を買ってきた。飾っておくぞ」
「わあ、綺麗!!ありがとう!!」

妹は、自分は薬を飲んでしばらく入院していれば治ると思っている。だから無邪気にはしゃいでいた。

「今日は元気そうだな。体調良いのか?」
「うん」
「治ったらどこに行きたい?」
「ポチの散歩しに公園行きたい」
「そんなところでいいのか?もっと海とか遊園地とかでもいいんだぞ?」
「いいの!普通の日常で!」

そして妹は死んだ。妹と仲の良かった看護師さんから妹が残した手紙を預かった。

お兄ちゃんへ。私、自分の命が長くないってなんとなく知ってた。でもお兄ちゃんがただそこで笑っていてくれる事が嬉しかった。もう泣くの我慢しなくていいよ。ありがとう。

俺はその場で泣き崩れた。
公開:21/08/29 10:18

富本アキユ( 日本 )

カクヨムにも小説を投稿してます。
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・SSG投稿作品1500作品突破

・作詞を担当
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・葉月のりこ様YouTubeチャンネル『ショートショート朗読ボックス』~ショートショートガーデンより~の動画内で江頭楓様より『睡眠旅人』を朗読して頂きました。

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