名もなき花の話

私は学生時代、全寮制の女子高に通っていて”野菊の君”って呼ばれていたの。
学校の方針で皆、本名じゃなくて花の名前で呼ばれていたわ。
一番仲が良かったのは花の君と呼ばれていた子。何の特徴もない、どこにでもいるような女の子。彼女はいつだって誰かの傍にいたの。だからかな？その顔がよく思い出せないの…
はっきりと思い出せるのは花の君が人を殺してしまった時の事…
相手はどうしようもないクズよ。そんな奴の為に花の君が人生を棒に振るなんて間違っている。
だから私、花の君を庇ったの。どうやってって？花を隠すのなら花の中よ。
「花の君はずっと私といた」と証言したの。いつも誰かと一緒にいる花の君。皆も「そう言えば一緒にいたね」とあたかも見ていたかのように証言してくれたわ。
そうやって花の君は守られたの。
でもね、おかしいの。そんな子、学校にはいなかったんだって。
じゃあ、誰があのクズを殺したのでしょう？