名もなき花の話

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一見すると本物そっくりな花。でもそれは叔父が作ったレプリカだ。
その証拠にこの花はどんな図鑑にも載っていない。叔父が作った、空想上の名もなき花。
叔父はレプリカに名前を付けようとしない。
「彼には元々の名前があるからね」
いくら金を積まれようとも売ろうとしない。譲ろうともしない。
「僕の家族なんだ。お金の問題じゃない。譲れるものじゃない」
叔父は寂しそうに笑みを浮かべ、教えてくれた。
「これ、実はレプリカじゃなくて剥製なんだ。この花はね、愛犬のポチから作り出したんだ。老犬だったから、綺麗に使えるところが少なくて難儀したよ」
花を愛おしそうに撫でる叔父に私は恐怖を覚えた。
そんな…ちょっと待って…じゃあ、私の家のあの大きな花のレプリカも…
「ああ、勿論剥製さ。姉さん、病気で綺麗に死んだからなぁ…凄く綺麗な花だって、娘の君も喜んでいたじゃないか。あの人は姿を変えてもやっぱり綺麗だったなぁ…」
ホラー
公開:21/08/27 20:19

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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