憑き物の予約

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「いらっしゃいませ、おや?」
2週間前に来店した客なので店主は顔を覚えていた。
「小バエで散々な目にあったぞ」
「予めご了承頂いたハズですが…」
「苦情を言いに来たんじゃない。肝に銘じて来年の予約を取りに来た」
「承知致しました」と店主は棚から商品一覧を取り出した。
「何!?もう売り切れが在るのか」
「はい。人気の憑き物はシーズン終了と同時に来年度の申し込みがありますので」
「こっちも地上とあんまり変わらないんだな」
「お客様みたく初盆の方は直前に来られて似た失敗をされますね」
「売れ残るようなのは一覧から外してもいいのでは?」
「仕組み上出来ないんです。バランスよく配置しないと現世に違和感が出るので」
そういうものかと客は一覧を吟味する。
「意外と蚊はお勧めです。不殺生戒の恩恵を一番受けれるんです」
腕に止まった蚊を殺さずに弟と見守るお盆の思い出が蘇った。

「来年は蚊を試してみるか」
ファンタジー
公開:21/08/27 16:15

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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