最後の喫煙所

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「ここが、最後の喫煙所か…」
市街地から少し離れた場所にある、プレハブのような簡素な建物。
煙草の税率高騰に続き、国を上げて喫煙を禁止した結果、煙草の販売店は消滅し、喫煙者は投獄された。今や喫煙者などいないのに、何故この場所が存在するのか。寂れたボロボロの建物が、心霊スポットとして一部マニアに人気らしいが。私は疑問だった。

そこは思ったよりも遠く、既に日は落ちていたが、私は建物に入ってみた。
…ヤニ臭い。煤で薄汚れた壁も不快だ。使われた形跡のない灰皿がポツンと置かれている以外に変わった所は無さそうだが、どこからともなく聞こえる不思議な声で、私は全てを理解した。

苦しい…肺が…
また値上げ…金を…
副流煙は害だって、あれほど…
火の不始末で、あんな事に…
子供に影響が…
煙草売れなきゃ、煙草屋なんて…

人々への煙草の影響は怨霊となり、ここへ集めて鎮めているのだ。
そうか、神社か。
その他
公開:21/08/27 18:00

お弁当係

2021年7月、投稿開始。
小説を読むのが好きですが、書くのも楽しそうで始めてみました。
読んでいただければ幸いです。
 

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