0
1

「この作品は四楽章構成でな。作者はなんと作曲中に投身自殺を図っているんだ。第三楽章を作曲した後、ふらりと橋から飛び降りた。幸いすぐ救い出されて一命は取り留めたけど、そのまま入院してたみたいだな。そして体力を取り戻してから、第四楽章に取り掛かって、その年の終わりに完成させた。」
「つまり、楽章の間に死にかけたというわけだな」
彼はその曲に針を落とした。
「どうだ、自殺未遂の後、作者は救済されたと思うか?」
「わからん。四楽章の主題は作者の若い頃の作品に酷似している。つまり、作者は一度リセットして、四楽章から自分の人生をループしようとしているんだ。彼にとってはそれが救いだろうが、このループは結局第三楽章に戻ってくる。」
「なるほど、俺も同感だ。」
そして、彼は声を潜めて、
「しかし、彼の奥さんは、この第四楽章を永遠に封印したらしいぜ」
「それで、彼はどうなった?」
「結局、病院で死んだらしい」
その他
公開:21/08/28 23:02

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容