名もなき花の話

私はその昔、願いを叶える花として皆に大切にされていました。
知っていますか？例えばマリーゴールド。あれは上手く育てると木みたいに凄く大きくなるんですよ。
私もそれと同じです。皆に大切にされ、枯れる事無く大きな木へと成長しました。
しかし私は願いを叶える事は出来ませんでした…だって皆が願うは自身の幸福と他人の不幸ばかり…相反する願いは叶えられません。
だから私は願いが叶った証拠の花をつける事無く、ただただ大きくなりました。
そしていつしか、私が花であった事を皆が忘れてしまったのです。
私は願いを叶える花。母が子に「健やかに育ってくれますように」と願えば花は咲きます。
何故、それすらもしなくなったのでしょう…
ですがそんな私にやっと叶えられる願いが来ました。
「この木、邪魔だな。枯れてくれないかな」
皆がそう願うのなら、私は枯れましょう。
人知れず、小さな花を咲かして終わりにしましょう。