縁日の楽しみ方

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妹を連れて、久しぶりに縁日に行く。僕は昔から運が悪いのか不器用なのか、小学校六年の今になるまで出店の遊びで勝てたことがない。
だが、今年は一味違う。

「お兄ちゃん、あれやろう」
妹は金魚すくいを指差す。
来たな。僕は内心ほくそ笑む。妹も金魚すくいは大の苦手だが、見るのは大好きなのだ。
過去の敗戦の記憶が脳裏を過ぎる。恐れるな、僕。きっと上手くいく。
「…この時を、どれほど待ったか。積年の恨み、今ここに晴らしてくれる!長年の自由研究の集大成!全自動金魚すくいマシンだっ!」

ポイをセットされたマシンは次々と金魚を掬っていった。大観衆を集めた僕は、金魚すくいの記録を打ち立てた。大量の金魚を僕と妹の両手に提げ、意気揚々と家に帰った。

この夏。
僕は、お母さんから大量の金魚についてのお説教と、自由研究の最優秀賞、そして妹のとびきりの笑顔を得たのだった。
青春
公開:21/08/24 18:00
更新:21/08/24 17:51

お弁当係

2021年7月、投稿開始。
小説を読むのが好きですが、書くのも楽しそうで始めてみました。
読んでいただければ幸いです。
 

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