どっちのフラグか

　なんでこんなことになってしまったのだろう。
　引き返そうという言葉を無視した時か？
　車のガソリンが切れそうなことに気づかなかった時か？
　思い返すと、どれもがこの状況のフラグに思える。
　この状況。
　どこともわからない山道で車がエンスト。携帯の電波も入らない。
　誰ともなく、どこかに人がいないかと言い出し、歩き始めて１時間。日も落ち、加えて土砂降りの雨。
　嫌なシチュエーション。
　要素が揃い過ぎている。
「あれ？　灯りが見えるぞ」
　先頭を歩いていた友人が叫んだ。
　俄然テンションが下がる。嫌な予感しかしない。
「どうする？　誰か様子見に行くか？」
　ごくりと生唾を飲む。
　ここが……。ここが運命の分かれ道か……。
　少し間を空けて、ゆっくりと手を上げる。

　一番最初の犠牲者になるのか、それともこの物語の主人公になるのか。

　一歩踏み出した。
　足音は雨音にかき消された。