希望の光

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未来から来たというその老人は、突然現れた。
「照射するだけで、特定のウイルスを駆除できるライトを作ったのです」
老人は街中で手当たり次第の人に話しかけた。
「未来の世界では、ウイルスの被害で人類は滅ぶ寸前です。ライトの開発が遅すぎて、もう手遅れなのです。ウイルスの脅威に晒されているこの時代なら、このライトはまさに希望の光になる。ライトの設計図が私の頭の中だけにあります。どうか、話を聞いて下さい」

やがて警察が呼ばれ、老人は連行された。
警察は老人の氏名や身元、薬物反応や精神状態、痴呆の程度にしか興味が無いようだった。
後に呼ばれた科学者が、衣服の年代測定、DNAの鑑定、時間渡航の方法を検証する事で、信じ難いがこの老人が未来から来たと立証した。

「で、どんな設計図なんだ?」
「どれだけの時間が経った…もう、忘れてしもうたわ」
そう言い残すと、老人は安いライトの光の下、息を引き取った。
SF
公開:21/08/25 18:00

お弁当係

2021年7月、投稿開始。
小説を読むのが好きですが、書くのも楽しそうで始めてみました。
読んでいただければ幸いです。
 

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