妹の年齢

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今日わかったのだけど妹はじつは俺より年上だった。
三十年前に商店街のいちばん奥の店に妹は入っていった。その店が何を売っているのか何をしているのか誰も知らない。錆びた入口から店に入ったものは出てこれないという伝説の店。それならと妹は入っていったのだ。そしてやはり出てこなかった。
それから十年ほど経ったころ妹が隣の県にいるという噂を耳にした。しかし噂は噂。どこで何をしているのか、聞き回ったけれど具体的なことは何ひとつわからなかった。
そのうちに妹のことは遠い昔話になっていたのだが、今朝ひょっこりと俺の家にやってきたのだ。
「何をしていたんだ?あの店にいたのか」問い詰めると妹は笑って、
「あの店で夢から覚めていたの」と言う。
「では、今は?」
「ここは夢のなかよね」とすまして言う。
妹は、自分は百五十歳だと言った。落ち着いた口調に俺は信じるしかない。どう見ても五歳の幼女にしか見えないのだけれど。
その他
公開:21/08/25 14:58
更新:21/08/25 15:03

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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