ガラスの小瓶

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仲間に宇宙飛行士を目指した理由を聞かれ、私はポケットから砂の入った小瓶を取り出す。
仲間はガラス瓶の中、星の形の砂を見て「綺麗な星の砂ね」と言った。それは半分正解で半分間違いだ。
昔、夜明け前の砂浜でこの砂と出会った。この砂は「宇宙に帰りたい」って泣いていたんだ。あからさまに鳴き砂と違う泣き方に最初は面食らったよ。しかも砂の声は私にしか聞こえなかった。皆、私の頭がおかしくなったと悲観していたね。
私?私は悲観しなかったよ。だって誰よりもこの砂が悲しみを抱えていた。だからどうにかしてやりたいと思った。
その日から私は宇宙飛行士を目指した。そして、今ここにいるのさ。人助けならぬ砂助け、それが私が宇宙飛行士を目指した理由さ。

私はスペースシャトルを出ると瓶の蓋を開ける。
星の砂は「ありがとう」と言って涙のような青い光を纏い、宇宙へと駆け出した。
私は空になったガラスの小瓶をギュッと握りしめた。
公開:21/08/23 19:36

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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