雑草園

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世の中に雑草という名の草はないって、昔の偉い人が言ったらしい。
逆に言えば、その頃は世界中に雑草があふれてたんだと思う。名前も覚えきれないくらい、たくさんの草が存在したんだな。今の時代からしたらおとぎ話みたいだ。

僕達の22世紀、地球は緑にあふれた綺麗な星だ。
町中に同じ高さの樹が茂り、通りも広場も均等に整備され、ゴミなんて一つも落ちてない。少なくとも見た目には、とてもとても綺麗な星だ。
公衆衛生と美化のために、土は徹底的に殺菌され、環境保全と緑化のために、遺伝子操作されたニューグリーンが爆発的に広がり、元々生えていた植物を根こそぎ枯らしてしまった。
だからもう、僕達の世界に雑草という名の草はない。

近代博物館の『雑草園』では、見渡す限りの原っぱに、立体映像の草花が並んでる。
そこに咲いたように見える、元々名前がない花の、手触りも匂いも、本物の色形も、僕達が知る機会は二度とないだろう。
SF
公開:21/08/23 14:47
更新:21/08/23 14:54
ラジオ『月の音色』 月の文学館 テーマ:名もなき花の話

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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