ガラスの小瓶

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ウチの薬箱には『父専用』、『母専用』と書かれた謎の小瓶が入っている。
子供の頃、いっぱいだった中身は今やほぼ空。大切に飲んでいる割には補充する気配はない。
「ねぇ…あの薬瓶の中身そろそろ補充したら?そもそもあれ、何の薬?」
思い切って聞いてみると両親は顔を赤くして「これだよ…」と空のカプセルの箱を取り出した。
「このカプセルはな、タイムカプセルって言って気持ちを保存出来る道具なんだ。見てろよ…母さん!大好きだ!」
父の叫びがカプセルに吸い込まれる。赤い液体が中を満たした。
「これは俺の母さんを愛しているって気持ちだ。母さんを嫌いになりそうな時、喧嘩した時に飲んでいた」
「私も同じよ。お父さんへの愛が覚めそうな時、いつも飲んでいたわ」
父は先程のカプセルを薬瓶の中へと入れた。思わず笑ってしまう。
「それなら猶更、補充しなきゃ」と私が言うと、両親ははにかみながら自室から大量の薬瓶を持ってきた。
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公開:21/08/22 20:30

幸運な野良猫

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元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
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