在宅で湿気るモラル

「ちょっと今いい？」
課長に呼ばれ距離をとって座る。
「吉田さん。在宅勤務は慣れた？」
「はい。何とか」
「そう。気悪くしないでほしいんだけど…」
胸騒ぎがする。
「吉田さん在宅の時の作業、質が良い時と悪い時のムラがあってね…」
しまった。バレたか。
「申し訳ありません！家の事に気を取られて注意散漫だったかもしれません」
「皆同じなんで、もし問題点があれば早めに…」
「はい。以後気をつけます」
自席に戻り鼓動が治まるのを待った。課長はまだそこまで怪しんでいないようで少し安堵する。
在宅勤務時の作業をたまに高校生の娘に手伝わしているのがバレたら即解雇だろう。
課長から渡された特にひどかった資料を眺める。

その晩、娘の部屋を訪れ
「お仕事手伝ってもらう時さ、もう少しこんな感じで手を抜いて貰えるかな。じゃないと違う人がやったってバレるから」
課長から渡された私が作成した資料を娘に見せる。