地震雷火事親父

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知ってるか?
美味いカレーってのはな。
地獄のように刺激的な香りで、
天国のように芳醇な味なのさ。
そいつを食ったらな。
火事のような情熱が、
雷のように体を貫き、
地震のような衝撃を受ける。

親父の言葉だ。
親父が店で出すカレーは、言葉通りとびきり美味い。吹けば飛ぶような小さな親父の食堂に集まる客は、みんなこの味を知っているから、口を揃えてカレーを頼む。
俺の母親は出張族で、家にいる時間はほとんど無かったから、俺は小さい頃から親父の飯をよく食って育った。だから、このカレーの美味さは誰よりも知ってる。

そんな親父が事故で死んだ。
こっちは店の後始末や、母親の支えで大変だけど。きっと親父は今ごろ、刺激的な地獄か、芳醇な天国を思う存分味わっているんだろう。
あれから、親父の味を超えるカレーには出会えていない。天才だったのだ、親父は。
地震雷火事親父。
俺にとっては全部、天災(才)だよ。
その他
公開:21/08/19 18:00

お弁当係

2021年7月、投稿開始。
小説を読むのが好きですが、書くのも楽しそうで始めてみました。
読んでいただければ幸いです。
 

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