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これは僕が小学校に上がる前の話である。ようやく一人で留守番ができるようになった頃、見慣れないおじいさんがやってきた。老人は中村と名乗り、「おじいさまの友人で線香立てにうかがった者であります」と言った。確かにその日は祖父の命日だったので、仏壇のある部屋に通すことにした。中村老人は仏壇の前で数珠を取り出し、何やら念仏を唱えた後しばらくの間、石のように固まっていた。やがて線香をあげ終わると、お供え物の箱を置き、足早に去っていった。
その日の夕方、外出先から戻った祖母が僕を見つけて言った。
「仏壇の菓子箱はどうしたの」
「おじいちゃんの友達が来たの。中村っていう人」
「ああ、おじいちゃんの戦友さんね。毎年東京から丁寧に線香立てに来てくれる方なの。え、ちょっと待って。確か、去年亡くなったはずよ」
青ざめた表情の祖母が半信半疑の様子で開けた箱の中には、祖父の好物だったという豆大福が詰まっていた。
その日の夕方、外出先から戻った祖母が僕を見つけて言った。
「仏壇の菓子箱はどうしたの」
「おじいちゃんの友達が来たの。中村っていう人」
「ああ、おじいちゃんの戦友さんね。毎年東京から丁寧に線香立てに来てくれる方なの。え、ちょっと待って。確か、去年亡くなったはずよ」
青ざめた表情の祖母が半信半疑の様子で開けた箱の中には、祖父の好物だったという豆大福が詰まっていた。
ファンタジー
公開:21/08/21 13:49
更新:21/08/21 13:51
更新:21/08/21 13:51
ご先祖
線香立て
不思議な思い出
2022年から米国在住。
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