こたつ犬のかじり

私は犬に尾行されている。私が立ち止まるとその犬も立ち止まり、振り返ると、あ、嗅ぎ忘れていました、とでもいうように電柱をくんくんしている。私が見ているとくんくんをやめず、目をそらすと私のふくらはぎを凝視している。それがきもい。犬は柴犬っぽいがこたつにも似ている。おそらく捨てられていたこたつを丸飲みしたのだろう、おなかがひどく角ばっていてこたつのあしが犬のおなかを突き破りそうに見える。だから犬には８本のあしがあってその意味ではタコっぽくもある。犬はそこそこ老年で首輪をつけた若い男を連れている。最近では犬が人を飼うというけれどこれがそうか。男は私に「普段はズッキーニを作っています」と言った。農繁期以外は犬に飼われているって新しいスタイルだなと感心していたら、いつのまにか犬が私のふくらはぎを齧っている。卵のつまったおいしいところだけ食べて逃げていく犬。私は男を連れ帰り次の抱卵に備えようと思った。