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子供の頃、我が家には毎週水曜日の夕方に豆腐売りのおじさんがやってきた。母が不在の時は僕が表に出て、家の前に停まった軽トラに向かう。そして、両手に抱えたボウルに大きな豆腐を二丁入れてもらうのが習わしだった。おじさんは僕が留守番をしているのを知ると、「お代はお母さんのいる時でいいから」と言ってにっこりと笑い、毎回ツケ払いにしてくれた。
しかし、ある時を境におじさんは姿を見せなくなった。何度かいつもの時間にボウルを抱えて待ってみたが、音沙汰がない。母から豆腐屋さんが仕事場で倒れ、入院しているようだとの話を聞かされたのは秋口に入る頃だった。やがて冬になり、豆腐屋さんが亡くなったという知らせが届いた。おじさんには遠くに暮らす一人息子がいたが後は継がず、豆腐屋は廃業するという。
結局、僕は最後のお代を払いそびれてしまった。あの豆腐が味わえなくなることよりも、おじさんにもう会えないのが辛かった。
しかし、ある時を境におじさんは姿を見せなくなった。何度かいつもの時間にボウルを抱えて待ってみたが、音沙汰がない。母から豆腐屋さんが仕事場で倒れ、入院しているようだとの話を聞かされたのは秋口に入る頃だった。やがて冬になり、豆腐屋さんが亡くなったという知らせが届いた。おじさんには遠くに暮らす一人息子がいたが後は継がず、豆腐屋は廃業するという。
結局、僕は最後のお代を払いそびれてしまった。あの豆腐が味わえなくなることよりも、おじさんにもう会えないのが辛かった。
その他
公開:21/08/18 02:56
更新:21/08/18 03:02
更新:21/08/18 03:02
豆腐
おじさん
思い出
2022年から米国在住。
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