アルパカ

川口がアルパカになったと聞いたので俺は水野、林田と三人で動物園に行った。柵で囲った草地に五頭のアルパカが草を食べている。どれが川口かな。俺たちは柵にもたれてアルパカを見比べた。あの垂れ目の奴じゃないか。水野が「川口」と呼んでみたがアルパカはのろのろと歩くだけ。こっちの受け口の奴だよ、と林田が「川口」と呼んだがやはり反応がない。とにかくこの五頭のどれかが川口で、川口に会えたんだから、まあいいか。閉園を知らせる夕焼け小焼けのメロディが流れた。
それから俺たちは一杯飲んだ。四人でよく行ったバーだ。カウンターで川口のことをひとしきり喋ると水野が「あそこのバーテン、さっきのアルパカに似ていないか」「そういえば奥で口をもぐもぐさせていたアルパカに」林が言う。
バーテンが近寄ってきた。「おわかりでしたか。じつはあそこにしばらく居て、先ほど出てきたばかりです。川口さんはまだとうぶん居るって言ってましたよ」