終わりの雨

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雨が終わらなければいい。そうすれば君と一緒に傘を差して、いつまでも寄り添って歩けたのに。しかし空気を読まない雨は、ピタリと止んでしまった。

「雨止んだね」
「そうだね」

晴れた空は綺麗だった。なぜだろう。
雨が降っていた時は、君との会話も弾んでいたはずなのに、晴れたら途端に君と話すのが照れ臭くなった。さっきまであんなにも馬鹿な話をして笑い合っていたのに。

「もうすぐお別れだね」
「うん……」

君は明日、遠くへ転校してしまう。その事を考えると涙が頬を伝う。

「泣いてるの?」
「……いや、さっきの雨だよ」

僕は小さな嘘をついた。

「そっか……。じゃあ私、行くね。今までありがとう!」

君は涙も見せずに一度振り返って歩いていく。

「……うん。元気でね」

こんな言葉しか言えなくて本当にごめん。気の利いた別れの言葉が思いつかなかった。
僕は、歩いていく君の後ろ姿を黙って見ていた。
公開:21/08/16 11:10

富本アキユ( 日本 )

カクヨムにも小説を投稿してます。
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・作詞を担当
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・葉月のりこ様YouTubeチャンネル『ショートショート朗読ボックス』~ショートショートガーデンより~の動画内で江頭楓様より『睡眠旅人』を朗読して頂きました。

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