世界が平和に見える椅子

ユネスコ世界遺産委員会はこのほどベトナムのカフェなどで用いられる座高の低い椅子を世界文化遺産に登録した。登録理由については「世界をよりフラットに感じることができる稀有な体験が可能」としている。委員の一人であるシモーヌ・ジュベール女史は「現代におけるアジアの7不思議の一つと言っても過言ではない」と語る。

以下は現在ベトナムに暮らす本紙記者からのレポートである。この国のオープンカフェではフランス統治時代の名残りからか、通りに面して椅子とローテーブルが置かれていることが多い。材質は風呂椅子と同じプラスチック製や折り畳み式、木製と店によって異なるが、まるで幼稚園児が座るような小さな椅子に大の大人たちが腰掛け、寛いでいる。実際、尻を床スレスレまで落とし、子供と同じ目線で通りをぼんやり眺めていると妙に心が休まるのは童心に帰れるからだろうか。少なくとも上から目線の存在しない世界は平和そのものである。