線香花火の記憶

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 私は吊るされていた。揺れないよう、丁寧に扱われているようだ。しかし、自由が効かないため、自分の姿を捉えることはできない。下の方が熱くて重い。小さくはぜる音が何度もする。何とも鬱陶しい。

 隣には私のほかにも吊るされている者がいた。他者のことを悪く言うのも何だが、ひょろっとして、惨めだ。かく言う私も、同じような姿なのだろうか。こんなことを考えていると、隣から私と同じはぜる音がし、何かが走った。そして、私は隣の者の変化に、見惚れた。

 暗闇に放たれて連鎖する、数多の閃光。その中心で凛として、輪郭と色彩を絶えず動かしながら、球状に燃える生命体。あぁ、私も今、あのような姿でいるのだろうか。

 しばらくすると、私の体が大きく揺れた。チャンスだ。私は自分の姿を捉えようと必死だ。しかし、そこにあったのは体から離れようとする小塊。もう熱さも重さも感じない。ぷつりと、私の記憶が途切れた。
その他
公開:21/08/17 09:11

サトウナオキ

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