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馬主をしていた祖父が最後に買った馬は走馬灯だった。
馬の置物で、中に蝋燭を入れる燭台がついてある。大きさも本物の馬と同じで今にも動き出しそうな雰囲気が出ている。
しかしそこに生物特有の気配はない。だからこそ走馬灯は不気味でもあった。
怯える私に祖父は微笑む。そして、燭台に火の付いた蝋燭を入れた。
「ほら、ごらん。走馬灯が儂の人生を見せてくれているよ」
それはまるでマッチ売りの少女の様だった。蝋燭が生み出す煙が祖父のこれまでを見せてくれる。
走馬灯はメリーゴーランドのようにゆっくりと揺れる。煙が見せる祖父の思い出の中、皆が笑って手を振っていた。沢山の馬が風を切り、一緒に駆け抜けていく。
「走馬灯は一生ものの馬だ。お前も歳を取った時、孫や子どもと一緒にこれを眺めるといい」
今じゃダメなの?と聞くと「お前さんにはまだ早い」と言われた。
「走馬灯も馬と同じ。心を通わせんと、想いを乗せてはくれんぞ」
公開:21/08/16 20:30

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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