ガラスの小瓶

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子供の頃、山で道に迷っていた所を河童の少女に助けられた事がある。
何時間も歩き続け、へとへとでお腹もすいて泣いている僕に少女はガラスの小瓶からピクルスを取り出した。
「食べる?」
きゅっきゅっ!ぽりぽり…酸っぱかったのはきっと酢が効きすぎていたからじゃない。僕が彼女に一目惚れしていたからだろう。
「川を下れば人里があるよ」
そう教えてくれた彼女は川に入ると自身の甲羅を指さした。
「乗って。しっかり掴まってね」
僕は浦島太郎よろしく、彼女の背中に乗って川を下った。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。安全運転で行くから」
僕のドキドキが彼女にも伝わっていた。彼女に僕の恋心は伝わっていなかった…
それが悔しくて、また彼女に会いたくて、僕は何度も山を登った。
彼女と会う度に見とれてしまう。だって彼女は会う度に綺麗になっている。
成長し、河童から人魚姫になった彼女を前に言葉を失うのは僕の方だった。
公開:21/08/16 20:27

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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