２時あがりの喪主

夫は野生動物を石鹸で洗ってはその写真をSNSに投稿する人だったからもし行方不明になったときはなんらかの動物に食べられたときだと思っていた。だから夫が食虫植物に食べられたと連絡がきたときはとても驚いて職場のピンク電話の前で洟が出てしまった。マスクはしていたけどマイクロ飛沫が心配で私は電話を切ってからアルコールのしみた紙で電話まわりをよく拭いた。すると驚いたことにピンク電話のピンク色が剥げてしまい怖くなった私は職場を飛び出してやってきたタクシーに乗りこんだ。
「ピンク電話ってピンク色のプラスチックだと思ってたのに外側に色を塗っただけのタイプがあるんですね」
運転手の男は車を発進させてから「へぇ」と言い、夫が食べられたことや夫にはじめて洗われた夜のことなどを私が話していると、彼は車を停めて道端の竹林に姿を消した。２時間経っても運転手は戻らず、私は仕方なく運転席に座り、客を拾い深夜２時まで働いた。